【お腹が弱い人必見!最近の研究からわかった大腸・小腸と食物繊維との関係は!?】

2022年1月15日

栄養学



・この記事はこんな人にオススメ・

→お腹が弱い人

→腸内細菌や食物繊維について詳しく知りたい
 

 

大腸・小腸と食物繊維の関係

今回は腸研究の最前線についてお話ししたいと思います。

今や健康な人とそうでない人、海外の人と日本の人、といった横軸で比べるだけではなくて親世代またはその上の世代、といった縦軸で腸内環境を比較検討する段階に入りました。

まさに腸のごとく長い歴史を紐解いて研究した、そのキーワードをお伝えしていきます。

『古代人のうんちはダイバーシティだった!』

(ダイバーシティとは多様性という意味です)

2021年夏、日本で行われた東京オリンピックでは様々な国の方が来日されました。

身長も骨格も筋肉のつき方もそれぞれ異なっていて髪や肌、瞳の色も千差万別!そんな各国の方々と僕たちの腸内環境は例えることができるのです。

小腸や大腸にいる腸内細菌は約100億兆個、種類にしたら約1000種類ほどとも言われていて、じつに多種多様な腸内細菌が存在しているダイバーシティが腸になります。

勿論すべての人間の腸に1000種類の腸内細菌が存在しているというわけではありません。

細菌の集合体を細菌叢と言いますが、これは民族または個人によってバラバラです。

ただはっきりしているのは多様性。どんな人でも多様性(ダイバーシティ)に富んでいた方が、断然お得だということなのです。

カードも多ければ多いほど、リスクに対応できるカードを出すことができますよね。

また、それは人種だけに限りません。

つい最近、メキシコとアメリカで約1000~2000年前の古代人のうんちが発見され更にその遺伝子研究が行われました。

今やテクノロジーってここまで進んでいるんですね。

驚きました。

その結果、多種多様な細菌叢が存在しているということがわかったんです。

そのうち一部の細菌を現代人のそれと比較してみると、工業地帯に住む人と非工業地帯に住む人とでは全く別物のうんちになったんです。

非工業地帯に住む人は昔の方のうんちと似ている部分はあったんですが、裏を返せば長い歴史の中で育まれてきた腸内環境が都市生活の中で失われているんじゃないかという【失われた細菌説】という説として出てきているんです。

ではなぜ工業区の都市生活者と古代人のうんちはかけ離れているのでしょうか。

考えられる可能性は食生活です。

これまでの腸内細菌の研究では、病気の人と健康な人の細菌叢の違いといったデータが多く出てきましたが、最近では食べ物の影響が重視され始めています。

というのも古代人は、おそらく芋や植物性の食品を主に口にしていたと思われます。

一方で都市生活者は、砂糖や動物性脂肪を毎日のように食べています。

こうした食生活によって腸内細菌の多様性が失われているという説は、やはり正しいのではないでしょうか。

マウスを使った実験報告があるのでご紹介します。

高脂肪食で食物繊維の少ない食事をマウスに与えると、腸内細菌叢の多様性が大きく減少していきました。

しかし食物繊維の多い食事に戻すと元通りになりました。

良かったです!!

ところが世代を重ねるごとにこの多様性は失われていき、三世代後になると一度食生活で失われた多様性は、食事を以前の物に戻したとしてもほとんど回復できないということがわかってしまったんです。

同じことが人でも起こっている可能性があります。これは京都の京丹後地方の研究で明らかになりました。

65歳以上の世代と比較して、世代が進むごとに腸内細菌の多様性が低下していることが明らかになったんです。

つまり、あなた自身の食生活は孫世代に反映されるということなのです。

気をつけましょう。

でもそんな先の世代のことなんか知ったこっちゃないよねっ!?と思ったあなたにお伝えしておきます。

もうすでにあなた自身の腸内細菌が、ヤバい状況に陥っているかもしれないんです。

ハイテク技術によって腸内細菌の解析データが蓄積されたことで、細菌叢をいくつかのタイプに分類できることが分かりました。

これがエントレタイプと言われるものです。

これによると、日本人高齢者は ビフィズス菌が多く存在する〔タイプ4〕というものに分類されます。

ご存知のようにビフィズス菌はいわゆる善玉菌です。

ビフィズス菌が多いのは日本人の特徴的なところですが、約300人位の腸内細菌を分析してみると ビフィズス菌を0~2%しか持っていない人が約25%もいることがわかったんです。

ビフィズス菌を保有しているのは日本人の約平均9%強と言われていますが、これは世界的に見るとすごく多い方です。

しかし実際には20%とか30%持っている人がいて、その人たちの数値に引っ張られての平均9%となっているに過ぎないのです。

蓋を開けてみれば4人に1人は2%以下しかビフィズス菌を持っていません。

しかもこの25%という数字には明らかに差があって、圧倒的に男性が多いです。

特に40歳以下の男性が、絶望的なぐらいビフィズス菌を持っていないのです。

となると、僕もビフィズス菌がないんですかね!?

いや・・・

でも・・・

僕、健康的な生活をしてもう15年や20年くらいになるんで、大丈夫だと信じたいと思います。

あなたはどうでしょうか?

このグループには便秘症状がほとんど出ないんですが、ビフィズス菌がいなくなると便が柔らかくなるという事実と一致しています。

理由が不明なんですが、かなりやばいですよね。

日本人の、特に男性若年層のビフィズス菌が減っている理由ははっきりとは分かっていないと先ほどもお話ししましたが一つだけはっきりしていることは、ビフィズス菌の餌である食物繊維の不足が確実にあるということは想像できます。

僕の奥さんもそうですが、友達でも一緒に食事に行ってもあんまり野菜とか食べないので、まぁどうなるのかちょっとこれから見ものだとは思っています。

2020年の18歳以上の食物繊維摂取率の中央値は約13.7gなんですが、目安量は

男性21g以上、女性で18g以上となっているなかでは遥かに及ばないです。

ちなみに1995年の食物繊維摂取量は約1日20g以上です。

たった25年でこんなにも下がってしまっているのですが、これは食物繊維を含む主食の炭水化物の摂取量が減っていることが原因の一つとも考えられています。

低炭水化物ダイエットとか朝食を抜くなど、その辺がかなり足を引っ張っているのでしょうね。

さらにこれはアーリーライフイベントに潜む可能性もあるんです。

ではアーリーライフイベントとは何でしょうか?

胎児は産道を通って生まれて来る時に、母親の腸内細菌を受け継ぎます。

その腸内細菌が自分の腸に定着して安定するのが生後3年で、この期間の生活環境が影響して腸内細菌が決まります。

『人は生後3年で腸内細菌の種類が決まり、また一生変わらないと考えられている。

これがアーリーライフイベントです。

産まれてから3年までのイベントがすごく重要だということで、この期間に多様な菌に触れる機会が多い子供ほど腸内細菌の多様性を育むことができるんです。

 具体的には、自然の多い環境のもと、兄弟やおじいちゃんおばあちゃんがいる大家族で育ったり、ペットと一緒に生活する、食物繊維が多い食事をしているなどです。

逆に言えば、その真逆のことをすると多様性が失われる可能性は高いということになります。

ある意味、3歳までが勝負と思ってください。

ここまでの話をまとめて、腸内細菌の多様性を育む因子と壊す因子をお伝えします。

1つ目、兄弟がいる。

2つ目、家にペットがいる。

3つ目、野菜をよく食べて育っていた。

4つ目、山や川などの自然が近くにあり、そこで遊んだ。

5つ目、外出後の手洗いは石鹸などは使わず水洗いだけ。

6つ目、風邪をひくと寝て治していた

この逆のことをすると腸内細菌の数が減ってしまうんです。

まずは、

1つ目、一人っ子(勿論それ自体が悪いわけではありませんが、関わり合いの意味で)

2つ目、生き物を飼ったことがない。

3つ目、ファーストフード中心で育った。

4つ目、大都市で育ち、遊びは室内だった。

5つ目、外出後はかならず消毒液を使ってしっかりと洗っていた。

6つ目、風邪をひいたときは抗菌薬とか抗ウィルス剤をすぐに飲んでいたなどですね。

今は新型コロナウィルスもあって、アルコール消毒なんかは仕方がないところですが他の部分はちょっと対策できそうですよね。

ちなみに、腸内細菌が乱れることを 「ディスバイオ―シス」と言います。

腸内細菌の数が激変したり構成バランスが崩れてくると、消化器官の病気や肥満、糖尿病などが引き起こされることが分かってきています。

一律にこれが健康的な腸内細菌叢で、これがディスバイオーシスだというような分類分けは出来ないのですが、民族や年齢によって細菌叢のバランスは明らかに異なってきます。

でも少なくとも日本人にとっては、ビフィズス菌が少なくなっているというこの現実がすでにディスバイオーシスということさえ言えます。

さらにこの新型コロナウイルスもディスバイオーシスを引き起こす原因です。

その際、震源地となるのは大腸でなく小腸です。

大腸の腸内細菌叢は、小腸がアミノ酸を取り込んで作り出す抗菌ペプチドによってコントロールされているという考え方があります。

抗菌ペプチドは異物を攻撃する物質で、正常に分泌されていれば炎症を抑制する腸内細菌が良く働き、分泌が低下すると腸内細菌叢のバランスが崩れるというものです。

新型コロナウイルスのAⅭE受容体は小腸に多く存在していて、アミノ酸の受容体とリンクしています。

ウイルスに感染すると、アミノ酸の取り込みが阻害されてしまうため抗菌ペプチドの分泌が低下して、その結果大腸の腸内細菌叢が乱れるということなんです。

腸の健康を守るためにも、感染症対策をまだまだしっかりやってみてください。

さらに腸内細菌の研究が進むにつれて、細菌が食物繊維を分解して作り出す代謝物質に注目が集まるようになってきました。

その一つに短鎖脂肪酸と呼ばれるものがあります。皆さんも一度はどこかで聞いたことがあるんじゃないですか?

この短鎖脂肪酸はその名の通り、短鎖の数が2~4個の脂肪酸の総称です

代表的なものは核酸、プロピン酸、酢酸の3つじゃないでしょうか。

短鎖脂肪酸の受容体は全身にたくさんあります。

ということは、もともと人間は菌と共に生きる運命にあったということの裏付けでしょう。

これらの受容体は短鎖脂肪酸の種類によって異なる反応をしていきます。

何か体に良さげなことをしてくれる、漠然とそんな考え方をさせてくれた短鎖脂肪酸になるんですが、それぞれちゃんと役割があったんです。

例えば核酸は大腸の機能を助けるとても重要な物質で、腸の蠕動運動や水分分泌を促して便を作る大腸になくてはならない存在です。

プロピン酸は全身を巡ってnb代謝や脂肪代謝に関わり、酢酸は炎症の抑制や腸管のバリヤー機能を維持する役割を果たしてくれます。

日本人は世界の中でも短鎖脂肪酸が最も多い民族とも言われています。

酢酸はビフィズス菌から作られて、プロピオン酸はビフィズス菌から作られる酢酸の最終代謝物質です。

[ビフィズス菌と核酸が腸内に存在する]というのが日本人にとってベストコンディションだと言えるでしょう。

そしてこれらの原料である食物繊維は超大事、超重要ですよ。

野菜!芋類!

皆さん食べてますか?

日本人の腸内環境が乱れてきているのは、近代化によって3世代前の人たちよりも腸内の細菌叢のバランスが減ってきているからです。 

私たちにとっては食実環境を変えたところであまり変わらないかもしれないですが、3世代先で生きる自分たちの孫世代に向けてより良い腸内細菌叢を受け継がせるためにも、野菜、芋、食物繊維をしっかり摂取して体をつくり直すことが大切なのではないでしょうか。

 
 
最後までご覧いただきありがとうございました。